マフィア コンプリート・エディション

※可能なかぎりストーリー上のネタバレを避けながら紹介しています。
発売日:2020/9/25
ジャンル:オープンワールド クライムアクションアドベンチャー
評価:★★★★☆
マフィアモノ好きならオススメ!そうでなくとも楽しめる重厚なストーリー!

この作品のオススメポイント
・禁酒法時代のアメリカ、マフィアという魅力的すぎる舞台設定
・サブクエストがないので本編に集中して楽しめる
・緊張感のあるストーリー



―まずは本作品の概要
 「マフィア コンプリート・エディション」は2002年に発売された「マフィア」の完全リメイク作品である。舞台はロスト・ヘヴンという架空の都市だが、ギャング全盛期だった時代のシカゴをモデルにして作られている。

―禁酒法時代のアメリカ、マフィアという魅力的すぎる舞台設定
 筆者は禁酒法時代のマフィアと言われるだけでワクワクしてしまうタイプの人間であるが、もしこれを読んでいる中に同じタイプの方がいれば特にオススメしたい。
 ピカピカのクラシックカーを乗り回し、トンプソン・サブマシンガン(あるいはシカゴ・タイプライター、トミーガンとも)を撃ちまくり、ボルサリーノを小粋にかぶりながら、美しい街並みを肩で風を切って歩ける世界が待っている。
 仲間となるマフィアのメンバーとの会話も非常に魅力的だ。その多くは車での移動中に繰り広げられるのだが、ファストトラベルでカットしてしまうのはあまりに惜しいと感じる。
 車内で流れるラジオBGMもレトロでオシャレなものばかり。車での移動も楽しいゲームと言える。

―サブクエストがないので本編に集中して楽しめる
 オープンワールドゲームなのでそれなりにマップの広さはあるが、サブストーリー・サブクエストといったものは存在しない。
 車、雑誌、タバコカードなど多少のコレクション要素はあるものの、いずれも本編の進行とは関わりがない。
 つまり一本道のゲームである。
 これは良い点と悪い点があり、悪く言ってしまえば物足りない、良く言えば所謂“おつかい”といわれるような煩雑なクエストやら水増し要素やらと向き合わずに済む。
 最大のメリットとしては、本編ストーリーに集中してプレイすることが出来るということ。なにしろ寄り道に気が取られることがないからだ。
 そして幸いなことに、この作品のストーリーは集中して取り組むに値するものだ。
 もちろん「フリーライド」と呼ばれる街を自由に探索できるモードも用意されている。前述のコレクション要素などは、ここで自分のペースで集めることが出来る。

―緊張感のあるストーリー
 主人公のトミー・アンジェロはしがないタクシードライバーで、ひょんなことからマフィアとの関わりを持ち、その世界に足を踏み入れていく。とはいえ、彼はまぎれもない一般人である。出来ることならマフィアなんかとは関わりたくないのが本音で、しかし彼らの報復を恐れてイヤイヤ言うことを聞くしかないというのがストーリーのはじまりだ。
 マフィアに与することが決まってからも、彼はマフィアのメンバーからすれば外から来た得体のしれない新参者である。当然、メンバーの中には彼のことを良く思わない者もいるし、そんな何者かにボスへの密告をされたらそれこそ破滅だ。そうでなくても、ボスの機嫌を損ねたら一巻の終わり。そんな緊張感のある状況で物語は進んでいく。
 もちろん警戒すべき相手は身内にいるだけではない。ライバルのマフィアグループだって当然いるし、警察だって抜け目なく目を光らせている。やるか、やられるか。そんなヒリヒリした展開にドキドキさせられる。
 徐々に働きを認められ、主人公はボスからの厚い信頼を得ることになる。着実にマフィアとしての階段を昇り、ただのタクシードライバーだった頃とは見違えるようだ。
 だが栄華の頂点で終わることがないのが、このゲームのストーリーの魅力でもある。上昇があれば、とうぜん下降もある。この作品は主人公であるトミー・アンジェロの生涯を最期まで描ききっている。
 ひとつのマフィア映画をそのまま体験しているような気分にさせてくれるのが、この作品の評価されるべき点だ。サブクエストはなくメインストーリーただ一本に絞っていることも、その没入感に一役買っていると言える。
 とはいえ、もう少しキャラクターを掘り下げるようなサブエピソードの一つでもあれば、という気持ちがないでもない。そう感じるのは、登場人物たちの面白いやりとりをもっと見たい、というポジティブな気持ちからだ。これで終わらせるのはもったいない、という名残惜しさからくる感情だ。
 つまりそれだけキャラクターたちに興味を惹かれる、ということの証左である。そんな魅力あるマフィアの世界を、ぜひ実際にプレイしてみてほしい。