テイルズ オブ アライズ

※この記事には本作に関する重大なネタバレが含まれます。
発売日:2021/9/9
ジャンル:心の黎明を告げるRPG
評価:★★★★☆
超絶進化したテイルズオブシリーズ最新作!納得の王道ストーリー!

 私の中でのテイルズオブシリーズといえば、短期間でコンスタントに作品を出し続ける中堅タイトルであり、そのぶん細かい部分の作り込みは中程度といった印象が強かった。これは批判的な意味ではなく、そのおかげで毎年なにかしらシリーズタイトルが遊べるという安心感の証でもあった。
 そういったイメージを、このテイルズオブアライズが良い意味で変えてくれた。シリーズの正当進化ともいうべき、素晴らしいブラッシュアップを遂げていたのである。

―“水彩画風”グラフィックの美
 まず特筆すべきはグラフィックの美しさであろう。美しさといっても、単に“リアルな・写実的な”といった意味ではない。「実写」と「アニメ調」のちょうどよい中間の造形とでもいえばいいだろうか。そこに水彩画風のアレンジが加えられている。
 この水彩画風のグラフィックづくりが素晴らしいのだ。これが良い意味でファンタジーの世界観とマッチして、ともすれば派手になりがちなキャラクター衣装や武器のデザインとそれ以外の背景とを上手く馴染ませてくれている。
 グラフィックの技術が向上すればするほど、ゲーム画面はどんどん現実に近いものになり、そのぶんファンタジーの突飛なデザインや派手な色使いなどが、背景から浮いてしまうということが増えたように思う。それを上手いかたちで解決したのがこのアライズなのだ。

―進化するアクション
 もちろんそれだけでなく、単純な技術の向上も随所に見られる。キャラクターのアクションもそうだ。強敵との戦闘後に流れるムービーでは、思わず魅入ってしまうような殺陣やトドメ演出がいくつも見られる。モーションアクターの力もあるのだろう、特にストーリー最後の敵との切り合いは思わず「カッコいい!」と口に出してしまったほどだ。
 “キャラクターの動き”という意味では、表情もそれに当てはまる。どのキャラクターもふと見せるちょっとした表情まで作り込まれており、本当に生き生きとして見えるのだ。そのおかげで、登場人物への感情移入や愛着といったものもいっそう深まっていったように思う。
 今までのテイルズオブシリーズでは、スキットと呼ばれる会話劇がアニメーションとして差し込まれていた。これはおそらく、細かい表情などは「3Dモデル」よりも「アニメ」というやり方のほうが上手く表現できていたからであろう。それが今作ではすべて3Dモデルで作られている。技術力のレベルアップがここにも表れているように感じる。
 (このスキット演出の変更についてはシリーズ愛好者の間で賛否に分かれたようだが、私は“賛”のほうに一票を投じたい)

―清々しいほどの王道ストーリー
 エンディングの締めが主人公とヒロインの結婚式で終わる。なんて王道。それこそが素晴らしい。特にここ何作かのテイルズオブシリーズは、ストーリーの最後が「主人公の自己犠牲」によって終わるものが続いていた。それによって世界は救われるが、しかしどうしても物悲しさが残る。それも一つの作品のかたちであるので、それ自体は悪いことではないのだが。むしろそのおかげで、この王道ストーリーが久しぶりに新鮮に受け取れたのかもしれない。これはシリーズ経験者ならではの感想であって、新規のプレイヤーはまた違った印象で作品を楽しむことが出来たであろう。

―終わりに
 スマートフォンゲームの流行などにより、あるいは蘇りあるいは滅びていったゲームタイトルが数多くある。長く続いたゲームシリーズが衰退していくさまを見るのは、非常に寂しいものだ。
 そのなかでこのテイルズオブシリーズは素晴らしいかたちで新生をはかり、そして成功したといっていい。他のゲームタイトルもこうであったなら、と思ってしまうほどの超絶進化。今後も発売されるだろう、テイルズオブシリーズの新作が今から楽しみである。