ELDEN RING

※この記事には死を狩る者、Dのイベントに関する重大なネタバレが含まれます。また、断片的な情報を元にした考察ですので、公式の設定とは異なる可能性があります。

 今回からは複数の記事にわたって、それぞれのキャラクターイベントでも繋がりのある“死を狩る者、D”・“魔術師ロジェール”・“死衾の乙女、フィア”について考えてみたい。
 いずれも筆者が“陰謀の夜”について調べている過程で関わった、印象的なキャラクターたちである。それまでの過程については、こちらの記事が詳しい。

 この三人の共通点は、黄金律から外れてしまった人々(具体的には“死に生きる者”)と関わりが深いこと。そして三者三様の考えから、行動を起こしていること。 

 死に生きる者とは、死んだ後も黄金樹に還れなかった人々を指している。通常であれば、狭間の地で死んだ者の魂は、黄金樹へと還っていく。それが何らかの理由で出来なかった人々のことを言っているのである。

 その原因としては、“陰謀の夜”でゴッドウィンが暗殺されたあと、各地に現れた“死の根”が考えられる。これについては“山賊スケルトンの遺灰”に書かれている。


 三人について理解するための前提知識はこんなところである。前置きが長くなってしまったが、本題に入ろう。今回は「死を狩る者、D」にスポットライトを当てることにする。

―死を狩る者、Dについて

 エルデンリングに登場する人物の中で、名前にイニシャルを使っているキャラクターは(筆者の知るかぎり)彼だけである。それが不思議だったのだが、疑問は後に解消した。

 Dには双子の弟がいたのである。

 兄がダリアン、弟がデヴィン、その頭文字を取ってDと名乗っていたのだ。

 なぜそんな名乗り方をしていたのかは、彼らの特殊な事情が関係している。“双児の鎧”の説明を見てみよう。


 ダリアンとデヴィンは双子として生まれたが、かなり特殊な体質だったようである。それぞれ自分の身体と意思があるが、同時には起きていられない。

 ロジェールの手紙には、弟デヴィンについて「永遠の都、ノクローンの傍ら 水道橋で、ずっと眠っているのだ」と書かれている。このことから、主に活動していたのは兄ダリアンということが分かる。
 同時には起きていられないのだから、ダリアンが起きている間はずっとデヴィンが眠っていたはずである。

 言葉を交わすこともないため、デヴィンは“自分がいつまでも起きていられること”に気づいて初めて、ダリアンの死を悟ったのだろうと推測される。
 (ただし、ダリアンを殺害した犯人をどうやってデヴィンが突き止めたのか、については謎のままである。双児の鎧を渡すときに主人公が伝えた可能性もあるが)

 兄ダリアンはティビアの呼び舟戦で、弟デヴィンは英雄のガーゴイル戦で、それぞれ協力サインから呼び出すことができる。

 表示される名前は、兄が“死を狩る者、D”であるのに対し、弟は“死に見えた者、D”となっている。死に見(まみ)えた、と読む。

 兄ダリアンを観察してみると、立っているときも座っているときも、片手で鎧の顔の部分を支えて(あるいは隠して)いるのが印象的である。


 銀色の顔の部分をよく見ると、目隠しがされている。この鎧は“双児の鎧”であり、この銀色の部分が双子の弟を表しているとすれば、弟を守りたいという意識が強いのかもしれない。

 「…俺は、黄金律に仕えている この壊れきった世界を修復するために

 偉大なるエルデンリングだけを、導きとしているのだ
 …そして死に生きる者たちは、黄金律の理を外れた存在
 奴らが存在するだけで、導きは穢れ、その正しさは陰る
 …だからこそ、根絶せねばならぬのだ。一匹残らずな…」

 自己紹介からも分かる通り、D兄弟は黄金律の強い信奉者である。黄金律の正しさの維持のために、死に生きる者たちを狩ることを使命としている。

 D兄弟がそのような思想を持つようになった原因としては、前述した彼らの特殊な体質が関係しているらしい。“分かたれぬ双児の剣”の説明を見てみよう。


 「それ(黄金律)だけが、彼らを呪いと呼ばなかった」とある。逆に言えば、黄金律以外のものは彼らのことを呪いと呼んだということである。

 つまりDら兄弟はその特殊な体質のせいで、なんらかの差別や迫害を人々から受けていたと推測できる。そして黄金律だけが彼らを受け入れてくれた。そのために彼らは黄金律の信奉者となったのである。

 黄金律だけが彼らの居場所であり、唯一の拠り所だったのだ。

 彼ら兄弟は、現代の感覚からすれば原理主義的で、頭の固い、過激な思想の持ち主に見えてしまうかもしれない。

 けれど自分の存在をただ一つ認めてくれたものに対して、それが正しいと信じたくなる気持ちは、人間の心理として当然ではないだろうか。

 狭間の地では、あの世界の“普通”から少しでも外れてしまった人たちへの差別や偏見が、あまりにも強すぎる。忌み子に対してや、しろがね人に対してもそうだ。そんな中で唯一の拠り所が黄金律だったとして、それを守るために必死で行動している者に対して、どうして責められるだろう。

 ただ自分の居場所を守るために、出来ることをやっているだけなのだ。


 「黄金律は、死に生きる理を許容しない」

 しかし、それに疑問を持ったのが魔術師ロジェールである。

 次の記事では、Dら兄弟とは異なる立場を取った魔術師ロジェールについて考察する。