ELDEN RING

※この記事には魔術師ロジェールのイベントに関する重大なネタバレが含まれます。また、断片的な情報を元にした考察ですので、公式の設定とは異なる可能性があります。

 前回の記事では“死を狩る者、D”についてまとめた。黄金律の信奉者であるDとは違った考えを持っているのが、魔術師ロジェールである。
 今回は「魔術師ロジェール」にスポットライトを当てる。

―魔術師ロジェールについて

 忌み鬼マルギット戦で協力サインを使って呼ぶことができるキャラクターである。
 話しかけることで戦技を学ぶことができ、強化済みの武器を譲ってくれるなど、主人公に親切に接してくれる。

 身につけている武具の装飾や上品な話しぶりなどから、貴族階級の出身であることがうかがえる。元々は学者志望だったとのことだが、そうならなかったのには何か事情があったのだろう。

 さて、学者志望だという言葉の通り、彼はある事件について調べていた。それが“陰謀の夜”である。しかし、その過程で彼は歩くことすら困難な状態に陥ってしまった。
 そうなってしまった原因は、ストームヴィル城の地下にある巨大な顔の形をした物体である。

 「ストームヴィルの地下にあった、異形の躯ですか
 …あれは遺物なのですよ。黒き刃の陰謀、そう呼ばれる凶刃の夜の
 (中略)
 …私は元々、学者志望でしてね、その陰謀をずっと調べているんです
 現状の世界の歪み、それを正そうとするなら
 その契機を知る必要があるのではないか、とね
 …まあ、お陰でこのあり様ですけどね
 貴方も注意してください。あの躯に、触れすぎないように」

 ストームヴィルの地下には、ロジェールの血痕が残されている。その映像で見る動きは、主人公が“死の状態異常”を受けたときのモーションと同じである。
 “死の状態異常”を起こせる武器の種類は少なく、

 ・武器“蝕のショーテル”(専用戦技「死のフレア」は死王子の炎を宿す戦技である)
 ・祈祷“死の雷撃”(それは、古竜を友としたゴッドウィンが振るったとされる、黄金の雷である)
 ・魔術“フィアの霧”(死衾の乙女、フィアはゴッドウィン復活を目論んでいた)

 と、いずれも死王子(ゴッドウィン)に関係のあるものである。

 ゴッドウィンは“陰謀の夜”で暗殺されたデミゴッドであり、“死に生きる者”たちが生まれた原因でもある。
 亡くなったゴッドウィンの遺体が黄金樹の根本に埋葬されたことで、狭間の地のあちこちに死の根がはびこり、“死に生きる者”たちが生まれてしまった。
 そのことについては“民兵スケルトンの遺灰”が詳しい。


 続いてロジェールの台詞を以下に引用する。

 「…やはり、貴方には話しておくべきでしょう
 死に生きる者たちをご存知ですか?
 黄金律の理から外れ、死に生きる者たち
 Dなどに言わせれば、その存在すら許されぬ、穢れた者たち
 私が、呪痕を求めるのは、彼らを救いたいからなのです
 おかしなことを、と思われるでしょう
 けれど私は、陰謀の夜を調べる中で知ったのです
 彼らは何も侵していない。ただ懸命に生き、それ故に、律の傷に触れてしまっただけなのだと」

 以上の台詞から、ロジェールは“死に生きる者”に対して、Dとは違った考え方をしているのが分かる。そしてそれが原因で、元々は友人同士であった二人の間に亀裂が走ってしまった。
 以下はDがロジェールについて語る台詞である。

 「…貴公、ロジェールを知っているか?
 円卓の露台に隠れ潜む、哀れな男を
 …かつては、優れた魔剣士だった
 聡明で、飄々としながらも、何事にも動じぬ芯があった
 だが、今はどうだ
 穢れた棘に貫かれ、世迷言を繰り返す
 見るに耐えぬ半屍だ
 …貴公、覚えておくがよい
 あれが、死に生きる者たちに惑わされた末路
 導きの穢れは、人を蝕み…、壊すのだとな」

 続いてロジェールがDについて語る台詞を引用する。

 「ああ、Dをご存じでしたか
 …あいつは、古い友です
 お互いに死を探っていた縁で、一時旅を共にしたことがあるんですよ
 けれど、道は別れました。もう、交わることはありません
 …けれど、友とは、往々にそういうものでしょう」

 「…そうですね
 Dが、私が今、何を求めているかを知ったら
 きっと、激怒してくれると思いますよ
 …それとも、少しは悲しんでくれるでしょうか
 まあでも、そんなことにはなりませんよ
 私は嘘つきですから」

 死について調べはじめた当初は、彼らの関係は良好だったように思える。しかし途中でロジェールの考えが変わり、そのことが原因で二人は袂を分かってしまった。
 おそらくロジェールの考えが変わったきっかけは、“死に生きる者”たちが生まれた原因を知ってしまったことではないだろうか。

 「けれど私は、陰謀の夜を調べる中で知ったのです 彼らは何も侵していない。ただ懸命に生き、それ故に、律の傷に触れてしまっただけなのだと」

 彼らは望んでそうなったのではない。たまたま偶然そうなってしまっただけで、責められるべき者たちではない。
 悪として断じるのではなく、救われるべき者たちなのだと。

 実際に“民兵スケルトンの遺灰”にあったとおり、“死の根”に触れるだけでそうなってしまったのなら、それは偶然の可能性もある。
 自分の意志でそうなったのなら自業自得と言えなくもないが、偶発的にそうなってしまったのなら同情の余地はある。

 そう、ロジェールは彼らの境遇に同情してしまったのだ。
 それはきっと、彼が陥ってしまった今の状態も関係しているのだろう。

 ロジェールはストームヴィル城の地下で“死の状態異常”を受け、Dの言葉を借りるならば「半屍」の状態である。
 ロジェール本人も自身の状態について「まして私は、半ば死に侵された身。きっと見えるものがあるはずです」と語る場面がある。

 今のロジェールは“死に生きる者”に近い状態である、と言える。
 実際に同じ立場に立ってみれば、見えるものも変わってくるものだ。ロジェールが“死に生きる者”に対して同情的な考えを持つようになったとしても、何らおかしくはない。

 ただし、その考えは「黄金律は、死に生きる理を許容しない」をモットーとするDにしてみれば、許されざる思想である。
 だからこそロジェールの言葉を「世迷言」と言って聞き入れようとはしない。

 しかし、Dがそのような考えを持つように至ったのにも事情があり、これはどちらが正しいとか間違っているといった話ではないのだ。

 なにかが間違っているとしたら、それは黄金律であると言うしかない。

 黄金律がもっと寛容なものであったのなら、このような対立は生まれなかったかもしれない。そのことについては、ロジェールも指摘している。

 「…貴方の学んだ戦技は、輝石の魔術の系譜です
 それは、この城の北、レアルカリアの大きな学院で発展したそうですが…
 古くは、黄金律と対立する理であったと聞いています
 とても、興味深いことです
 かつて黄金律が、対立する理をすら受け入れる、寛容なものであったのなら
 それが砕け、歪み、修復が必要になった今こそ
 …そうしたあり様が重要であろうと思えるのです」

 かつての黄金律がもっと寛容であったのなら、今こそそれを思い出すべきだと。そしてその考えの通りに、ロジェールは“死に生きる者”を救うべく行動していたのだろう。
 しかし、ロジェールはストームヴィルの地下で受けた傷がもとで、志半ばで命を落としてしまった。さぞかし無念であったろうと思う。筆者も彼との別れはあまりにも悲しく、しばらくその場を動けなかった。

 だが、“死に生きる者”を救う方法がなくなってしまったわけではない。
 同じように行動していた人物が、もうひとりいる。

 それが“死衾の乙女、フィア”である。
 次の記事では、“死に生きる者”たちのための律を打ち立てようとした“死衾の乙女、フィア”について考察する。