AI:ソムニウムファイル|レビュー
AI:ソムニウムファイル
発売日:2019/9/19
ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★☆
夢の中に突入し深層心理を暴き出せ!画期的なシステムで謎を解くSFミステリーアドベンチャーゲーム!
今年の6/23に続編である『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』の発売が控えている本作。来たる新作をより楽しむために、遅ればせながら前作となる『AI:ソムニウムファイル』をプレイしたのでレビューしたい。
といっても、ただの“刑事”と“相棒”ではない。主人公である「伊達鍵(だてかなめ)」は、警視庁にある先進式人脳捜査部隊ABISに所属する警察官。そして相棒である「アイボゥ」は、AIが搭載された特殊な義眼である。
いきなり「先進式人脳捜査部隊」と言われてもピンとこないだろうが、これは“人の脳内をも捜査範囲に出来る”捜査部隊ということなのである。
このゲームは、通常の刑事の捜査範囲である現実世界と、もうひとつ「人の脳内」をも捜索することができる、SF推理アドベンチャーなのだ。
通常の刑事としての職務は「捜査パート」で行うことが出来る。ここでは事件の関係者に聞き込みを行ったり、事件現場を検証するなどの基本的な刑事としての仕事をすることになる。
そして「ソムニウムパート」では、先述した“人の脳内を捜査”することになる。これにはPSYNC装置と呼ばれる特殊な装置を用いて、「夢」として現れる対象人物の脳内を捜査していくのだ。
捜査のためには、対象人物と捜査官の脳をつなぎ合わせなければならない。それを可能とするのがPSYNC装置というわけである。
画期的なシステムだが、制限もある。あまり長いあいだ接続し続けていると、対象者と捜査官の双方に危険が生じるため、制限時間は6分と定められている。
つまりこの6分の間に、捜査官は何らかの事件解決の糸口を見つけなければならない。そして重要なのは、対象者の夢の中で何かを見つけたとしても「それが現実の捜査での証拠とはならない」ということである。
あくまでも“夢は夢”であり、本人の自白や直接的な証拠とはなり得ない。ソムニウムパートで見つけたものは、現実での捜査のための手がかりやヒントとして扱っていくことになる。
メンタルロックはさまざまな謎解きという形で表現される。謎解きの答えは一つとは限らず、複数のときもある。
そしてその「メンタルロックの乗り越え方」によって、物語が分岐するシステムになっているのだ。そう、このゲームの展開は決して一本道ではないのである。
ゲームシステムとしては非常に面白い。けれど、もっと現実的に考えてみるととても恐ろしいことのように筆者は感じた。
主人公の解釈によって、いくらでも話が変わるということである。
主人公が他人の深層心理に介入し、それぞれ別の物語に再構成し直してしまう。そう考えると、なんて責任の重い立場なのだろうと思う。
そして、夢を覗かれている側の人物はどのように自分の深層心理を暴かれ、そして主人公によってどのように解釈されていったかを知ることが出来ない。
夢の中のことを、見ている本人は認識できないからだ。
一方的に夢の中で心理を覗き見られ、そしてそれに弁解も反論もできない。
「ソムニウムパートで得られた情報は直接の証拠にならない」というのは、ある意味で“捜査対象者を守ることに繋がっている”のだ。
でなければ、捜査官の解釈でいくらでも犯人をでっち上げられることになってしまう。それが意識的であれ、無意識的であれ、だ。
人間の認知の不確かさ・曖昧さを改めて突きつけられるような。興味深さと恐ろしさを同時に味わわせてくれるゲームシステムとなっている。
主人公たちが追っている事件は、「被害者が生きているうちに左目がくり抜かれ、その後なんらかの方法で殺害される」という非常に陰惨なものだ。
しかし、作品全体に流れる空気は、意外にもそこまで重いものではない。
しかし、作品全体に流れる空気は、意外にもそこまで重いものではない。
それには個性的なキャラクターたちによる力が大きいのだろう。シリアスな事件に対して、ここまで明るくて良いのだろうかと思わせるほど、あいだに挟まれるキャラクター間のやり取りは笑いに溢れたものになっている。
他作品のパロディや、現代社会によくある問題を皮肉ったものなど、バリエーションも豊富だ。最初はそういったコメディ要素に眉をひそめることもあるかもしれないが、プレイしていくうちにキャラクターの個性として愛せるようになってくる。
たとえ相手が人間でないAIであったとしても、相棒となることは出来る。人のように大切に思うことも出来る。
そう気づかせてくれる、素敵なストーリーに仕上がっている。
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